ナンテン(南天)は縁起のよい木といわれ、お正月に飾られることが多いですね。
赤や白の実が美しく、紅葉も楽しめるのが魅力です。
ナンテンの特徴と主な種類、剪定時期と方法など育て方のポイントを紹介します。
実がならない理由についてもまとめてみました。
ナンテン(南天)の特徴と種類
ナンテンはメギ科の常緑低木。日本、中国、東南アジアが原産地です。
ただ、原産地は中国で古い時代に日本へ渡来したと書かれているサイトもありました。
慶応義塾大学・磯野直秀の『明治前園芸植物渡来年表』によれば鎌倉時代(1230年)とされます。
でも、日本では四国や九州など暖かい地域に自生していますよね?
実は、自生しているナンテンは中国から渡来した栽培種が野生化したものと考えられているそうです。
「南天」という和名の由来も、漢名(中国での名前)の「南天燭」や「南天竹」を略したものとされています。
・南天燭(なんてんしょく)は、赤い実を「燭/ともし火」に見立てたもの
・南天竹(なんてんちく)は、幹の黒い節を竹に見立てたもの
樹高:1~3m
開花期:6~7月
花色:白
果実色:赤、白
花よりも実や紅葉や実を楽しむ木なので、9~10月の紅葉や11~翌年2月が見頃の季節です。
縁起のよい木
日本ではナンテンが「難転」⇒「難を転じて福となす」に通じることから厄除けや縁起の良い木として親しまれてきました。
江戸時代の百科事典といえる『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』には「南天を庭に植えれば火災を避けられる」とあるそうですよ。
どこの家でも火災よけ、厄よけとして南天を植えていたといわれています。
現在でも、ナンテンは縁起物として正月の生け花、門松、南天箸などに使われています。
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薬用
乾燥させた果実は南天実(なんてんじつ)と呼ばれ、漢方では咳止め剤として利用されています。
CMでお馴染みの南天のど飴もナンテンの実が原料です。
また、葉には防腐効果があるといわれています。
赤飯の上に葉をのせたり、食べ物の下に敷いたりなど料理にも使われました。
主な種類・品種
江戸時代から品種改良が行われ多くの園芸品種が生み出されました。
現在では約40種が「古典園芸植物」として栽培されています。
実をつけない品種です。
通常のナンテンより樹高が低く50cm程度までしか生長しません。
葉は常緑性で、夏は緑ですが冬になると鮮やかな赤へと変化します。
花が少ない冬花壇にオススメです。
寄せ植えやグラウンドカバーとして利用されます。
黄色みをおびた白い実をつけます。
1年中緑の葉をつけていて紅葉しないのが特徴です。
糸のように細長い葉の紅葉が楽しめる品種です。
樹高は低く、盆栽に仕立てて楽しめます。
ナンテン(南天)の育て方
苗の植え付けは、3~4月と9~10月が適期です。
地植えする場合は、午前中の光が当たるような半日陰が適しています。
強い西日が当たる場所は避けましょう。
通気性、水はけがよく、適度な湿度が保てれば、土質は特に選びません。
庭土に腐葉土や堆肥を混ぜ込んで、高めに植え付けるとよいでしょう。
鉢植えの場合は市販の培養土を使うと簡単です。
水やり
地植えの場合、特に必要ありません。
鉢植えの場合、土が乾いたらたっぷりと与えましょう。
夏場は水切れに注意してください。
肥料
もともと養分が少ない土でも育つ植物なので基本的に肥料なしでも育ちます。
植え付ける時や植え替えをする時に、有機肥料や化成肥料を与える程度でよいでしょう。
肥料を与え過ぎると枝ばかりが伸びてしまい、実のつきが悪くなることがあります。
病害虫
モザイク病、葉枯病、すす病が発生することがあります。
また、初夏から秋にかけてカイガラムシが発生することがあります。
植え替え
鉢植えを何年も植えっぱなしにしていると根詰まりを起こして花や実の生育に影響が出ます。
2~3年に1回を目安に、ひと回り大きな鉢に植え替えます。適期は3~4月です。
増やし方
種まきか挿し木で増やすことができます。
種まきの場合、植えてから開花までに4年以上かかります。
挿し木のほうが簡単で早く育つので、増やしたい場合は挿し木のほうがよいでしょう。
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ナンテン(南天)の剪定時期と方法
ナンテンは「株立ち」といって、株(根元)から複数本の細い幹が立ち上がる樹形をしています。
年数が経つと多くの幹が育ち、大きな株群になります。
全体的にはコンパクトにまとまるので毎年剪定する必要はありません。
幹だけ伸びて下葉が落ちたり、細くて弱い枝があるとき、大きくなりすぎたときに枝を切って樹形を整えます。
剪定の適期は3~4月です。
方法
古い枝、細くて弱い枝、込み合った枝を根元から切り取りましょう。
幹の途中から伸びている枝は、新しい枝を残し古い枝は切り取ります。
1度実のついた枝は3年ほど花や実をつけなくなるので、その枝も切り取ります。
大きく育ちすぎた場合は、適当な高さの枝を残して育ちすぎた枝を根元から切り落とすか、適当な高さで切ります。
ナンテン(南天)の実がならない理由と対策
実がつかない主な理由には次の3つが考えられます。
①肥料の与え過ぎ
窒素肥料を多く与えると枝や葉が成長するほうにばかり栄養が使われてしまい、花が咲きにくくなります。
栄養分が不足気味のほうが花つき、実つきが良いといわれています。
肥料を与えるのをやめるか、控えめにしましょう。
②開花時期の長雨
花の咲く時期が梅雨と重なることが多いです。
雨の日が続くと、やってくる昆虫の数が少なくなって受粉が充分に行われないことがあります。
花の上にビニール袋などをかぶせて雨よけにしましょう。
完全におおってしまうと昆虫が来れないので気をつけてください。
花粉は水分(雨や朝露)が苦手なので軒下のほうが実のつきは良いです。
③日照不足
日陰でも育ちますが、実つきをよくするには日当たりが良い場所を選ぶことは大切です。
西日が当たらず、半日程度は日光が当たるところが良いでしょう。
対策
①自家受粉(自株の花粉で受粉すること)しづらい植物なので近くに別種のナンテンを植えてみましょう。
②1度実をつけた枝は翌年から3年くらいまで実をつけることがありません。実のついている枝は切り取って部屋に飾りましょう。若い枝を伸ばすことで実つきがよくなることがあります。
③幹の周囲30cmほどにシャベルを入れて根切りをしてみましょう。
さいごに:寒冷地で育てられる?
お正月が近づくと園芸店でナンテンの枝が販売されますが値段がちょっと高めです。
自宅で育てられたら経済的でいいですね。
というわけで、今回はナンテンの特徴と種類、育て方について調べたことをまとめてみました。
暑さ寒さに強く丈夫で育てやすいので初心者にもおすすめの樹木だそうです。
とはいえ、もともと暖かい地方で育つ木で自生しているのは西日本が中心。
庭木として植えられているのも東北南部以西なのだそうです。
寒冷地に住んでいますが、冬越しは大丈夫なのか気になりますね。
調べてみると北海道以外であれば地植えでも越冬可能だそうです。
ただし、寒風が当たる場所は避ける必要があります。積雪が多ければ葉茎が折れない対策も必要です。
鉢植えで育てて、春から秋は戸外、冬場は室内に取り込んで管理するということになるのでしょうか。
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